プライベート・スカイ

頑張らなきゃって思った。

だから今はヤル気だったし、仕事も頑張った。
もちろん佳依からの仕事も。彼に言われるまま私は色々な人と出会い、たくさんの薬をバラまいていった。

最初はね、罪悪感もあったの。

キャバに来る『顧客』は慣れたものだったから平気だったけど

昼間に会って普通の人に薬を売ると、自分が悪い事をしてるんだと思わされた。

'この人はどんな生活をしてるんだろう'

薬を手渡す度に

私──何をしてしまったのだろうって思った。

だけどそんな繊細さも、数をこなすうちに慣れて何も感じなくなった。

どんどん自分が冷たく無機質な人間になっていく事実を、受け入れようとは思わなかった。

今日もまた

佳依から連絡がきて、薬を受け取る為に会わなきゃならないのが

ホントに嫌だった。

私としたがるから。

あの夜から、佳依には触れさせなかった。
それだけは頑張ったの。



「俺、レイナの家で休みたいんだけど」

佳依は会うなり、そう言った。

「自分の家に帰ってよ。私、具合悪いからダメ」

「ふーん?具合悪いんなら送ってくよ」

「いいよ、平気だから!」

「お前、俺と居るの嫌なのか?」