プライベート・スカイ

そのうち佳依から仕事の連絡メールが入ってきた。

『アズマは通さずに、俺から直でアレを受け取ったら、'ファニー'という店に行くこと』

そして店の住所と、時間が書いてあった。

指定された通り、佳依の会社の近くまで行くとすぐに彼が姿を現した。

「時間通りだな。店の場所分かりそうか?」

「うん、多分」

「今日のトコは比較的楽な相手だから。お前の方が入りやすい店だと思うし」

「そう、分かった」

どんな店で、どんな相手だか分かんないけど
お互い目印になるものを指定して持っていく。

目的は同じなのだから、まず間違えたりはしないだろう。
相手がどんな人であろうと緊張はしなかった。

「じゃ行くわね。時間もないし」

「あ、レイナ」

呼ばれて振り返ると、佳依は私の頬に手を添えて
人目も気にせず私にキスしてきた。

唇だけが触れ合う軽いキスだったけど、こんな所で?!

嫌そうな顔をした私を見て笑いながら

「愛してるよ」

と言って彼は会社へ戻っていった。





嫌…だ。

まだドキドキしてる。

忘れなきゃ。深く考えないようにして、私は'お客'のいる店へと向かった。