彼と出会った時
透依に『同じ大学』だと言ったのは嘘だった。
あんなにいい大学なんか行けない。頭も悪いし第一、私大なんて学費がなかった。
透依のことは全部、佳依から聞いて知っていたし、実は遠くから顔を見たこともあった。
透依に近づいたのは…佳依の弱みを握りたかったから。
透依を誘惑してやろうと思ってたのよ?私。
でも、佳依とは性格がまるで違っていて
誠実で素直で、包み込むように私を愛してくれる。
あの腕に守られる安心感が大好きだった。
こんなに汚れて醜い私なのに、ね。
透依が私の全てを知ったらどう思うのかしら?
…きっと軽蔑するよね?
私…昨日、貴方の弟と内緒で寝たのよ…?
貴方と付き合っているのに
義務的で半ば強制だったのに
途中ドキドキしながら彼に抱かれたのよ?
──絶対に軽蔑する。私を捨てる。
怖
い…
翌日の目覚めは気分が最悪だった。自分に嫌気がさす。
なにしてんの…私。
あの後も、佳依は優しく私を抱いた。
こんなの初めてだったし…
だからって何の言い訳にもならないけど。
罪悪感と後ろめたさで透依からのメールになかなか返信できなかった。


