プライベート・スカイ

成田美夜に会ったこと

彼女に慰謝料を払うと約束したこと

透依には何も言えなかった。
もしかしたら、透依が何とか話しをつけてくれるかもしれないと思ったけど

そうすると、絶対に仕事は辞めろって話しになるような気がした。

透依には言ってないけど私、欲しいものがあるの。

本当のお父さんとお母さんと、三人で家族だった頃の…私が生まれ育った家。

今は義父家族が住んでいるけど、あの家を取り戻したいの。

私がまだ幸せだった頃の象徴みたいな気がしてた。大切な家。

ずっと夢だったけど、この仕事をしていれば絶対に手に入ると思った。

佳依と出会って、色々あったけど副業もやらせてくれて

手を伸ばせば今すぐにでも届く距離に'夢'があると思っていたのに

…遠くなっちゃった。


今のところ、義父が住んでいるのだから売り渡されることはないと思うけど

ちょっと心配。

でも透依の方が先だから。もう少し待ってて、お母さん。

私があの家に連れていくからね。

財布の中にある小さくたたんだ懐紙の中には
母親の遺骨がお守りのように入っていた。

それにちょっとだけ呟くと
私は久しぶりに佳依に電話をかけた。