しらすに呼ばれた 正宗と春吉は 呼ばれた意味すらわからず、座っていた。
八反が 公金を使い込んでいた事を 知った時は 驚かされたが 自分が なんらかなの責めを 負うとは まったく思っていなかった。小島は 二人に静かに問い掛けた。
「お主らはあの店に行った事があるな?」
「はいーございます」
二人はダブりながら 返した。
「ならば、その時の金は 八反が 横領した金とは 知っては いまいな?」「もちろんでございます。知ってて ついて行きましょうか」
また 二人がダブりながら 返した。
「知らなかったで済む訳がなかろう!」
あまりの小島の大声に 二人は 縮み上がって 唖然としていると、小島は たたみかけた。
「知らずとはいえ、横領した金で飲み食いした事実は 動かし難い。ましてや、お主らは 勘定方の役人である!武士として 何らかの責任を取らねばなるまい!」
正宗も春吉も 愕然とした。
武士としての責任の取り方と言えばー切腹…なのか。
「追って沙汰を申し渡す!しらすはここまで!」
小島は、一方的にしらすを 打ち切り退場した。
残された2人は しばらく 動かなかった。
と、春吉が
「我が武運も、こけまでか」
絞り出す様につぶやくと 力なく 退場した。
正宗は (まだ 切腹以外の沙汰も考えられる。希望を捨てるな…まだ…死にたくない!)
必死で 涙をこらえた。