しらすが 開かれたー裁かれるのは 八反である。
代官が 現れるまで、しらすにて 待つ八反は 後ろ手に 縛られ、うなだれたまま 動かない。髷は 落とされ 羽織り袴は 脱がされまったくの罪人にしか 見えない。
それは 八反が はたらいた 罪の重さを 物語っていた。(悪い事なのは わかっていた…しかし、お通に 会うには…あの馬鹿高い払いの あの店に 通うには…これしかなかった!)
ある意味 八反は 確信犯であった。
お通に 会いに行くために しなければならない事を したまで…という思いがあった。ここまで 発覚しなかったのも、八反の勘定方としての経験から また、バレれば お通に 会えないという、一途な?
執念みたいなものからでも あった。八反は 明らかに 自分を 見失っていたのだ。
しらすでの 代官が現れるまでの 少しの時間…八反は ずっとお通の事を考えていた。
(結局お通と関係は持てなかったが、良い。お通は拙者だけを好いておると 言っていた…少なくとも おれはただの客では なかった)
ただのカモだった事を 断首になる直前のこの時までも 八反は 気付かなかったのである。