「八反どの」
襖が スパっと 音を立てて開いた〜と 同時に 八反の腰が 跳ねる様に 浮いた。
「お通!待ちくたびれたぞ!」
「お奉行さま。お許しを」
演技とは 思えぬほど 息を切らしている。
その息遣いが 妙に妖艶で、その美しさ、振る舞いが 一瞬にして 座を 支配してしまった。
(これがお通…)
正宗は 思った…(八反がハマるのも、無理はない。男ならたいてい…)
結局 座についたのは 10分あっただろうか…そんな時間で 正宗も春吉もお通に 魅了されていた。
奉行職以上という 規定がなければ お通めあてで 金が 続く限り通っただろう…二人は 同じ感想を持った。
しかし、色町の店と違い、ここの女は なかなか 体を許さない。しかし、その可能性を 客に 抱かせるのが 皆 上手いのだ。
教育され、マニュアルの様なものが あるのかも知れない。
夢見心地で 正宗が 帰途に 着く頃、城では 八反の公金の横領が 発覚し、上へ下への大騒ぎとなっていた。