「じゃあ行くか!」 その場の重い空気を跳ねとばすように兄はわざわざ明るい声を出しました。 まさか、この重い空気が自分によったものだとは思わなかったでしょう。 「桃子も一緒に、な?」 兄はそう言うと、ん?と桃子の顔を覗きこみました。 その些細な仕草に周りは頬を染めます。 「(こいつムダなところに神経使ってやがる…)」 犬はうんざりした表情を浮かべます。 「わんこは黙っとけ!」 兄は片方の眉を下げながら犬の頭を叩きます。 その間にも。 犬は男から目を離そうとはしませんでした。