「な…んだ?」



犬はその場に立ち尽くしました。



もちろん、キジも同様。



「なんで今、桃子さんの方見たんでしょう…。」



「いや…今のは見たというより睨んだと言ったほうが…。」



2人はお互いが聞こえるだけの小さな会話をすると再び男の方に目をやりました。



「気のせい…じゃないよな?」



「絶対現実です。現実逃避、しないでください。」



「してねーよ。馬鹿野郎…。」



喋っていても上の空。



「目、はなすな。キジ。」



「犬さんも、ですよ?」



何か嫌な予感でもしたのでしょうか。



男はいまだに兄と話している桃子に視線を向けています。