「皆〜早速だけど、タイム計るからね」
先生が長い髪の毛を一つに結んで、自分が走るわけじゃないのにジャージ姿で気合いが入っていた。
「せんせ、はり切り過ぎだよ」
市村が笑いながら先生に言う。
「皆にとっては小学生最後の運動会だし、勝って気持ち良く卒業してほしいのよ」
「先生まだ四月だよ。卒業って、早過ぎ」
「とにかく一位を狙って練習しましょう」
先生がこんなに張り切る理由は、噂だけど『きんいっぷう』って言うお小遣いが校長先生から貰えるかららしい。
「ユウキ」
「何?」
軽く準備体操をしているユウキに話しかけた。
「手抜いて走るなよ」
「わかってる」
最後の運動会だし、先生にも喜んでもらう為にも
『絶対勝つ!』
と、ユウキと心の中で誓った。
