「君は・・・ここで幸せではないんだね?」


「紫苑さん・・・」


不意に問いかけられて花音は「幸せって何ですか?」と聞き返したくなった。



自分が求める幸せはカイトさんがいなくては成立しない。



「カイトと小夜子さんは別れたよ」



「わか・・れた?」



「君がフランスへ発つ日に小夜子さんは流産が嘘だった事をカイトに話したんだ」



呆然と立ちすくんでいる花音をイスに座らせると自分も横に腰掛けた。



「カイトも幸せそうではないよ」



「カイトさん・・・」



カイトの名前を呟くと涙の粒がドレスに落ちた。