「…また来てるしっ」

俺は廊下でウロウロしている
一人の1年ぼうずを見つけた。

「よく先輩のクラスまで来れるね~」

美恵が塾の宿題をやりながら言う。

「俺がアイツの恋の相談してやってから
 ずっと来るんだよね~」

「…でも、嫌じゃないんでしょ?」

そう、美恵の言う通り。

はっきし言って、面倒くさいけど
話しをするのが大好きな俺には
嫌な事ではなかった。


「おい、また来たのかよ?
 宮元港一く~ん??」

「…はい、来ちゃいましたー」

今日も元気なさげに
悲しく笑う春輝の恋敵。

「今日はどうした?」

「……大竹先輩に、
 どうしても聞きたい事があって」

俺より一個も歳が下のクセに
真っ直ぐな瞳を俺に向ける。

「俺に聞きたい事?」

なんだろ~と、軽く考える俺。


「小沢先輩って、何か隠してますよね?」


宮元のその言葉に俺は笑いを失った。

「…ちょっと行こ」

俺の変化に気付いた宮元は
素直に俺の後ろに付いて来る。



そして辿り着いた階段裏。

ここでよく、宮元の相談を聞いてやる。


「…さっきの話しね……。
 実は俺も、チラっと知ってる」

俺の言葉に宮元がやっぱりという顔をする。

「俺、波川の友達と小沢先輩が
 やりとりしてるの、偶然見ちゃったんです」

「…やっぱり長谷川瑞希が関係してるのか」

「大竹先輩は何か知ってるんですか?」