転んだら死神が微笑んだ

それから、わたしと女将さんは一緒にショッピング・モールへと出かけた。

なにかおいしいものでも食べましょうと、女将さんはまるで少女のように肩を弾ませながら、下駄を鳴らしていた。

その姿はやっぱり目立っているのだが、大きなショッピング・モールの中ではすぐに吸い込まれていった。


あかり「へぇ〜。」

もしこれが都会に在ったのであれば、あまり驚くこともないのだろうけれど、この田舎の一等地にそびえたっているのを見ると、感嘆の声をあげずにいられなかった。

中は3階建ての建物で自動車がたくさん止まっていた。

食品館や洋服、雑貨や本、CDにレストラン街、ここにくれば一度に何でも揃う。


女将さん「ええと、レストラン街は確か2階ね。」

最初に会った女将さんの印象とは違い、結構ショッピング・モールには立ち寄っているようだ。

てっきり女将さんは、夢乃屋に一日中ほとんど居て、お店を切り盛りする厳格な人だと思っていた。

意外とミーハーなんだな…。


女将さん「『スウィーツ・カフェ』、今バイキングが開催されてるんですってよ。お腹一杯食べられるわね。」

あかり「あ、ああ、そうですね。楽しみだな〜…。」

何となく、ついていけていないわたし。

「ショッピング・モールに行く」という選択は、今日は間違いだったのかもしれない。

エスカレーターから望む景色は、なんともキラキラしていて、家族連れはみんな笑顔だ。