転んだら死神が微笑んだ

あかり「あの…、お母さんとは、知り合いだったんですか?」

涙が自然とひいてから、わたしはお座敷に座っていた。

女の人「そうよ。良子ちゃんは、この夢乃屋でアルバイトをしていたのよ。」

あかり「アルバイト?」

女の人「ええ。学生の頃にね。良子ちゃん一生懸命働いてくれたわ。」

あかり「へぇ、そうなんですか。あの…。」

女の人「ハハ。私はね、夢ノ原幸子よ。ここの女将をしているの。」

あかり「あ…。すみません…。」

女将さんは、わたしが誰なのか尋ね損ねて、呼び方に困っているのをちゃんと見透かしていた。

あまりにもあっさりとそう返されてしまったわたしは、何だかとても恥ずかしかった。


女将さん「あかりちゃんは、今日はどうしたの?」

あかり「え?あ、えっと、しょ、ショッピング・モールに行こうと思ってて。」

女将さん「あら、そうなの!?それは悪いことしちゃったわね〜。こんなとこで足止めさせちゃって。」

あかり「い、いえ。」

ショッピング・モールに行くことは実のところすっかり忘れていた。

それは大変な事故に遭遇したのは事実だけど、わたしにとってあまりそれほど重要なことではなかったのかもしれない。

女将さん「そうだわ。一緒にショッピング・モールに行きましょうか!?」

あかり「へ?」

女将さん「ずっとここに居るのもなんだし。そうよね、にぎやかな場所の方がきっと気分も明るくなるわ。」

あかり「ああ、なるほど…。」

女将さん「私も、さっきまで無性に腹が立っていたから、気晴らしでもしたいわ!」


あかり「ああ…、なるほど…。」