転んだら死神が微笑んだ

体育の時間、わたしは気分が悪くなっていて見学をした。

わたしが日陰に座っていると、見学をしたもう一人の女の子が同じく日陰に座ろうとわたしの横にやってきた。

その子は、あのグループの中の一人だった。

どちらかというと、気弱でやさしい感じの女の子だった。

すると、その子が運動をしているみんなを見ながら、顔を動かさずしゃべりかけてきた。


さっきはごめんねと。


その子が言うには、グループの女の子のお母さんが病院でわたしのお母さんを見かけたらしい。

話をしたその女の子のお母さんは、うちのお母さんがニュースで話題になって呼びかけているウイルス感染者だとわかると、家に帰るとすぐに娘に話をし、わたしに近づかないように注意をうながしたらしい。

それが、今日のその態度だということだ。


どうしたらいい?


わたしはその子に聞いてみた。

けれど答えは返ってこない。


ごめんね。


もういちど、最初に聞いた言葉が聞こえてきた。

その『ごめんね』の意味が、一体どういう意味を含まれて放たれたものだったのか、その時のわたしにはわからなかった。