転んだら死神が微笑んだ

あかり「うわっ。辛い…。何これ〜。」

貴志「男の刺激、ミントだろうが。お前のも甘いってぇの。」

あかり「辛いにも限度があるわよ。それに、ガムはフルーツに決まってるでしょ?」

貴志「フルーツって。このフルーツの味が、工場でどうやって再現されてるのか知ってるのかよ?」

あかり「あー!!そんな夢のないこと言わないで。」

貴志「もともと夢なんて見るタイプじゃねーだろ?」

ガムひとつで、こんなにしゃべってる。

さっきまでの電車の中のモヤモヤは何だったんだろう。

二人ともせきを切ったかのように、ガムについてあれこれ言い合っていた。

貴志「だいたいな〜、ガムっていうのは…」

あかり「もう、ガムの話はいいから〜!」

そんな光景を、勘違いしながら見ている二人の人物がいた。

ミキとかなえだ。

二人は遠くからでもわかるくらい、ニヤニヤ、ヒソヒソしながら、こっちをずっと見ていた。

あかり「あ…。」

わたしは慌てて、タカシとの距離をとった。

ミキ「お熱いね!二人ともっ。」

かなえ「ったく。今日がどんな日かわかってんの?」

誤解のひやかしが、わたしたちに浴びせられている。