転んだら死神が微笑んだ

電車の中はすいていて、わたしたちは隣り合わせで座った。

タカシは目的地の駅まで、ずっと窓の外を見ていた。

わたしに話しかけることは一切ない。

な、なんかしゃべってよ。

いつもは、うるさいと思うコイツの声も、ここまで黙られると、ちょっとは聞きたいと思う。


あ、あれ?何考えてんだろ?


変なの。

チラチラとタカシの顔を見ながら、わたしは下を向いたり、一緒に窓の外を見たりしていた。




あかり「ガム食べる?」
貴志「が、ガム食うか?」


わたしたちの声は、ほぼ同時に発せられ重なりあっていた。


アナウンス『次は〜…駅……駅。』


やっとしゃべったと思ったら、もう目的地だった。

見つめあったまま、両方がおんなじタイミングでおんなじ事を言うもんだから、なんかおかしくて笑ってしまった。

二人「ア、アハハ。」

貴志「お、降りるか。」

あかり「うん…。」






あかり「ねぇ、食べる?」

わたしは、もう一度たずねて、持っているガムをかばんから出した。

貴志「ああ。お互いの交換するか?」

あかり「そうだね。」

電車を降りて、二人のガムを交換して食べた。