転んだら死神が微笑んだ

目を開けると、タカシの顔がものすごく近くにあった。

あかり「わっ!」

わたしは、びっくりしてタカシの体を思いっきりはねのけて、離れた。

貴志「感謝のないヤツだな。助けてやったんだから、ありがとうぐらい言えよ。」

あかり「あ、ありがとう…。」

だ、だってびっくりするじゃない。アンタの顔があんなに近くにあるんだから。

あれで、そのままありがとうって言えてるほうがどうかしてるわよ。

心臓がドキドキしていた。すごくキツいくらいに。

あ〜、はやくおさまんないかな〜。

わたしは胸のとこに手を当てて、ずっと心臓のドキドキを抑えていた。

貴志「ん?」

タカシがその手元を見て、わたしの首筋にキラリと光るものがあるのを見つけた。

知春さんにもらったネックレスだ。

貴志「それって…。」

ゆびをさすのをみて、タカシがネックレスを見ているのがわかった。

あかり「あ、かわいいでしょ?」

貴志「どうしたんだよ?それ。」

あかり「買ったんだよ、おこづかいで。」

わたしは勢いで嘘をついた。

まだ、ドキドキがおさまってなかったから。

あせって、適当なことを言った。

貴志「あ〜。あっそ。」


鼻で笑っていた。まるで、わたしが嘘を言ってしまったのを見破っているみたいだ。

貴志「さっさと行こうぜ。こんなとこで油売ってるのもなんだし。」

腰に手をあてて、くいくいっと親指を道の先に向けている。

あかり「あ、そうだよね。電車間に合わなくなっちゃう。」

胸のドキドキもまだおさまってはいないけど、もう気になるほどではない。