転んだら死神が微笑んだ

あかり「昨日会ったおじさん覚えてる?」

貴志「え?誰のこと?」

あかり「昨日、朝学校行くとき、サラリーマンみたいな人に会ったじゃない。わたし、声かけられて。」

貴志「あ〜、あのふざけた感じの人?」

あかり「その人が、この人を殺そうとしてるの。」

わたしは、タカシに調査書の紙を渡した。

タカシはそれをだまって読んでいる。


貴志「この坂口って人が、あのおっさんに殺されんの?」

タカシは紙に目を向けたまま、聞き返した。

あかり「うん。…たぶん。わたしにもまだよくわかんないんだけど…。」

貴志「えっ?よくわかんないで言ってんの?」

ちょっと、すすり笑うような感じでその言葉は聞こえた。

やっぱり、信じてもらえるわけなんてないか。

コイツに相談したって、どうしようもないことだよね。

わたし今、とんでもなくバカなことやってるんだよ。

きっと、コイツはいつもみたいにわたしのことを『バカ』って言ってくるに違いない。

タカシの口が開くのが見えた。『バ』というような口の動き。