転んだら死神が微笑んだ

あかり「あ。」

そういえば、確かめなきゃいけないことがあった。

こればかりは、知春さんに相談しても、どうなることでもない。

それは、はたしてコイツが『カッコイイ』かということだ。

自分で確かめなくちゃ。

わたしはしばらく、タカシを見ながら歩いた。


えりもとまで伸びた髪の毛。

唇は結構厚い。

鼻はすっと伸びていて、目はこちらをにらんでいる…

貴志「何?」

あかり「え?!いや…、その…。」

貴志「じーっと、人の顔見てさ。あ、俺に酔ってた?」

あかり「まさかっ!ほら、あの二人組がさ、アンタのこと『カッコイイ』なんて言うからさ。」

貴志「見る目があるね〜。」

あかり「どこがカッコイイんだろって思って、見てただけよ!」

貴志「カッコイイだろ?」

あかり「どこが!?」

貴志「あ〜あ、素直じゃね〜な〜。」

『カッコイイ』って、何だろう?

あんまりタカシがあれこれ言うもんだから、よくわからなくなってきた。

結局、タカシがそっちなのかは、わからずじまいだ。


あかり「あ!合コン『さんさん』になったから、よ・ろ・し・く・ね!」

貴志「それが、人にものを頼む態度かよ。」

あかり「アンタにはこれくらいがちょうどいいのよ。」

貴志「何だよ。それ。」

あかり「変なの連れてこないでよ。」

貴志「大丈夫だよ。任せとけって。」

あかり「こっちは心配なんだけど。」

貴志「お前がハブられるようにはしねぇからさ。」

あかり「え。」

いったい、何の心配してんのよ。

わたしが心配なのは、アンタの人選のほうなんだから。

貴志「じゃあな。」

そう言って、タカシはいつもの分かれ道のところで帰っていった。

あかり「たま〜に、カッコいいこと言うんだから。」

べつに、ハブられたって、どうってことはない。

また、いつもと同じになるだけ。

だからさ、そんな心配なんかしなくていいんだからね。