転んだら死神が微笑んだ

タカシは冷ややかな目でわたしの左手を見ている。

貴志「…似合わねーな。」

わたしは急いで、手を後ろに隠した。

いつもなら何か言い返すとこだけど、なぜか何も言えなかった。

貴志「まぁ、いいや。行こ。」

あかり「あ、ちょっと待ってよ。」

あかり「何あったか、聞かないの?」

わたしは自分の左手の意味が知りたくて、タカシにさりげなくふってみた。

貴志「ああ。」

あかり「何で?」

貴志「興味ないから。」

あかり「は?!それってどういう意味よ?」

貴志「この前のおかえし。」

あかり「おっと、そう来たか。」

貴志「べつに悲しい素振りでもねぇのに、いちいち聞いたりしないよ。何かいいことでもあったんだろ?」

だるそうな顔をしたまま、コイツはわたしを見て言った。

あかり「『悲しい素振り』だったら、聞いたの?」

貴志「野暮だね〜。そういうことは、フツーは聞かないの。」

あかり「そうなんだ。」

この左手の真意は聞けなかったけど、悪いことじゃないらしい。

それで、よしとするか。