転んだら死神が微笑んだ

お父さん「どうかしたのか?あかり。妙な顔して。」

あかり「え?ね、寝起きだからだよ。ほっといて。」

わたしは、そのまま洗面所に向かった。



お父さん「ひどい娘でしょ〜、山田さん。いつもあんな感じなんですよ〜。」

山田「はっはっは。そんなことありまっせーん。うらやましい限りですよ。」

お父さん「ご家族は?」

山田「妻と娘が一人いるんですが…、今は一緒にはいません。」

山田「私の仕事の関係でね…、独り身です。」

お父さん「そうだったんですか…。」

山田「へっ。きっと、今頃はお嬢さんぐらいの歳ですかね。」

わたしは、顔をタオルで押えながら、リビングのほうを覗いた。

おじさんは、お母さんに対して深々とお辞儀をしていた。

そうだ。あの人はフツーのサラリーマンだ。


帰る間際、おじさんはわたしのほうを向いて、笑って出ていった。

わたしが覗いていることに気がついていたらしい。