転んだら死神が微笑んだ

「…大丈夫だ……ああ……」



あれから、どれほど眠っていたんだろう?

わたしは、誰かがしゃべっている声で目が覚めた。

まだ外は暗かった。

携帯を開いてみると、午前二時半を過ぎていた。


あかり「何だ…。まだ夜中か。」

わたしを起こした声の主は誰なんだろうと思い、眠い目をこすりながら、窓の外を見た。


外にいるのは、あのおじさんだった。



山田「まだ見つかってない。大会社の社長とかなら、話は別だったんだがな…。ああ。今回は少々てこずりそうだ。」


いったい誰としゃべってるんだろう?

なんか、しゃべり方が違う。


山田「サカグチヤスヒロ…。顔と名前だけじゃな。本当にコイツが、やっているのか?」

おじさんは、誰かを捜しているみたいだ。


山田「顔を見る限り、マヌケそうなツラしてやがる…クックック。ああ、ああ、大丈夫だ。任せとけよ。必ず、殺してやるよ。そのために俺がいるんだからな。」


今、なんて言ったの?

『殺す』って言ってた?

あのおじさん、一体何なの?

わたしは何だかドキドキしてきて、体中が震えてきた。窓から入りこむ気温の冷たさのせいもあるからかもしれない。



おじさんは、携帯を切ると、家のほうへと戻っていった。




そのときに見えた顔は、わたしに見せていた顔とは違い、とても冷たい顔をしていた。



あのとき一瞬だけ見たあの顔に。