「そしたら……『ちょっと待って!』
電話を切ろうとする私の言葉を遮り、智香が引き留めるように言った。
「………どうしたの?」
「私ね、澪から電話がかかってくるまで、心配してたのは当然なんだけど、ふと気になったことがあってね………」
智香が何を言いたいのか、検討もつかないでいた。
「私たち、家の住所を言ってなかったよね?」
「…………うん。」
「でしょ? なのに、車が止まって、ドアが開いた時には、私の家の前だったのよね〜………」
確かに、送ってやると言われ、あの男の人の後を着いて行き、車に乗せられた。
私も智香も、住所を言った覚えもなかったし、相手も聞いてこなかった。
「……………。」
「どう考えてもおかしいよ〜。あの人に殴りかかろうとした時に、止めたやつがいたじゃん?あいつ、あの人に頭を下げてたし……、あの若さでリムジンなんかに乗って、しかも専属の運転手付き。やっぱり、ヤバイ系……?」
さっきも、車の中で、話していたが、ヤバイ人という疑惑は消えないで、いるんだろうと、私は思った。
あの若さでと智香が言ったので、私も思い返すことにした。
高級そうなスーツを、ビシッと着こなしていて、髪の毛も、嫌みのない程度に纏められていて…
…………記憶を辿る
お兄ちゃんと同じぐらいかな〜……
25才ぐらい?
私には7つ年の離れた兄がいる。
同い年ぐらいかと、一瞬思ったけれど、お兄ちゃんとは、比べ物にならないくらい、威圧感があり、もっと大人びた印象だった。