ｵｿﾛｲ

『やぁ、洋子ちゃん』
『待ってたのよ清水様。さぁ、ソファまでご案内するわ、さぁさ、お連れさんも早く』
塚原たちに席を勧め、清水の隣にちょこんと座った栗色の目の少女はその眼と同じ色の髪を後ろで束ね、柔らかいフリルのヘッドドレスをまとい、くるぶしまでの黒いワンピースと真っ白なエプロンを着て銀盆を持っていた。きっとここの制服なのだろう。
『紹介するよ、塚原だ。この通り堅い男でね、こういう遊びには慣れていないのさ』
『まぁ、ウブでいらっしゃるのね』
色々ご教授願うよ、と塚原が冗談混じりに笑うと、ええよろこんで、と洋子は人懐っこい笑みで返すのだった。
塚原はこれを大変好意的に受け取った。
『まぁまぁとりあえず、ウイスキーを二杯、ロックで頂こうかな』
清水がそう言うと、洋子が言葉を向こうへ投げた。
『小夜ー!そこの洋酒の瓶を取って頂戴!』
小夜、と呼ばれた娘は装飾の施された柱に寄りかかるようにぼんやりと立っていた。黒髪で姫切りを短くしたようなモダンな髪型の小夜は、洋子に声をかけられた瞬間その人形のような体をピッと動かし洋子に嬉しそうに微笑みかけて、只今、と言って他のテーブルをすり抜けるようにしてカウンターへ向かった。