たんぽぽ

 僕は春華とのメールのやりとりの間に受信した複数の誕生日メールを改めて見返しつつ、ぼんやりしながら返事を送った。

 僕の思考は目の前の小さな機械ではなく、頭の中に記憶されているいつかに占領されていく。

     *

 2000年4月。結局、春華からの電話はあれ以来、来ないままであった。

 僕が高校1年生になった、1学期の始業式の日の朝。

 僕が山の麓の駐輪所に行くと、偶然英男と一緒になった。英男は、僕に気づくと軽く挨拶をして、気まずそうに封筒を渡してきた。

「これ、春休みに今井から預かったんだ」

「エッ…」

 僕はそれを受け取る。

 白を基調としたかわいらしい封筒だった。表には春華の字で『高嶺雄太様』とあり、裏の隅には『今井春華』とあった。間違いなく春華からの手紙だった。

 卒業式のあの日の春華の態度と春休みの間、電話一つくれなかったことから内容は容易に想像できた。

 僕は英男とバス停に並びながら白い封筒の封を開けた。中には封筒のちょうど2倍の大きさの便箋が1枚入っているだけだった。

 高嶺へ
 何かいろいろあって、気まずくなったし、別れよ。
 ほんと勝手でごめん。
 今井春華

 それはたった2行の手紙だった。僕はそれをさっと読むと、目一杯の強がりを言う。

「今井が別れようだって。俺はとっくに自然消滅だと思ってたよ。これってやっぱフラれたことになるんだろうな。まいった、まいった」

 そのときに、無理矢理作った下手な笑顔は、自分で言うのもなんだが、歪んでいたのではないだろうか。

 それもそうだ。僕はこのときも心で泣いていたのだから…。卒業式や春休みの間そうしたように。