大塚と神崎





咄嗟に、あいつの顔が浮かんだ。


…でも駄目だ。

神崎が私を助けてくれるわけない…‥。




……そのはずだったのに、



「おい、人の女に手を出すな」


突然目の前に現れた神崎は相変わらずの無表情でそう言い放った。

…そして、あっという間に、数人いた男子は神崎の手によって道に転がされていた。

神崎はなぜか喧嘩も強かった…。



「俺に喧嘩で勝てると思うなよ、馬鹿共め」

倒れている男子たちにそう吐き捨てて、神崎は私をおいて足早に立ち去って行く…。



…私は慌ててその背中を追いかけた。


「神崎!待ってよ!!」


呼びかけても振り向いてくれない神崎の腕を私は掴んだ。


「離せ馬鹿」

「やだ」


神崎はため息を吐いて、私の方を向く。


「わかっただろ。もう俺に関わるな」


「…あんな噂がたっているから、神崎はあんなこと言ったの…?」


…私のその問いかけには神崎は答えなかった。

でも答えないということは肯定だということだ。



神崎は、私のためにあんなことを言ったのだ…




…だとしたら、


「 …すっごくむかつくんですけど……」


私は今の気持ちをそのまま口にした。



「はぁ?お前、助けてもらった上に、せっかく俺がお前のためを思って言ってやったことがむかつくだ?」


神崎は不機嫌そうに私を睨むけど、それも私はむかついて仕方なかった。


「…私、神崎にあんなこと言われて、めちゃくちゃ傷ついた」

「……」



のの子が学校辞めたことよりも、

あんな噂が広まっていたことよりも、


神崎にああ言われたことが一番傷ついた…。