次の日。あたしは、吸い込まれるように屋上へ行ってしまった。

狭山深雪の涙の理由を知りたかったから。

あの涙は、なんだったのか。

ギィ…と、重たいドアを開ける。

狭山深雪は、あたしに気付いたみたいで、逃げようとした。

だけどあたしは、狭山深雪の手首を掴んでこういった。

「ちょっと…聞きたい事あるんだ。いい?」

狭山深雪は、おとなしくその場に座った。

「あのさ…昨日、どうして泣いてたの?」

「……………………」

話しづらいのか、狭山深雪は顔を背けた。

「…話しづらい内容なら、無理してまで話さなくてもいいよ。
 ゴメンね。」

あたしが立とうとすると、狭山深雪が口を開いた。

「…病院があって……母が…入院してる…んです…。」

かすれた声で話してくれた。いろんなこと。

母親が病気にかかってから、姉と二人暮らしをしている事。

Xに、目をつけられるような事は、一切していない事。

たくさん、話してくれた。

あたしは、分かった。きっと、依頼者が全てを始めて、狭山深雪は何も悪く無いんだと。

「…あの、さ。これからは、あたしの事、春火って呼んでくれない?だからあたしも、深 雪って呼んでいい?」

狭山深雪は、こくりと頷いた。

「あたし、Xの正体を突き止めたい。だから、深雪も、一緒に闘おうよ。
 辛いかもしれないけど、2人居れば大丈夫でしょ?」

ニコッと笑いかけた。深雪も、ちょっとだけ笑った。

「…よろしくね。春火ちゃん。」

「うん。よろしく。深雪^^」


カシャッッ  

カメラの音がした。

「…?誰かいるのかな…。」

深雪が、キョロキョロと辺りを見回した。だが、誰も居なかった。