「ねーねー。春火ぁ。数学の宿題見してくんない?
 昨日さぁ、合コン行ってー、朝帰りしたんだぁ。」

琉璃が、自分の席の椅子をあたしの席の前に持ってきて、私に話しかけてきた。

「合ってるか分かんないよ?あたし馬鹿だし。」

と言いつつも、つい、数学のノートを差し出してしまった。

「ゴメンねぇ。あ。ココでやってもいー?」

「うん。いいよ。」

琉璃は、自分のペンケースを取ってきて、カリカリと写し始めた。

「あ、まだいいんちょ来てないよねー?」

琉璃が、サッと顔を上げ、教室をぐるりと見回した。

いいんちょってのは、2-Cの委員長、桜井 稟(サクライ リン)の事。

いっつも宿題写してる人をセンセーにチクる、いわばクラスの敵ってヤツらしい。

でも、真面目なだけなんだってことを、みんなは分かってない。

それに、すごく優しい事も。

「うん。来てないよ。」

私は、苦笑いしながら答えた。

その時、教室のドアがガラッと開いた。

「おはよーっす。」

「琉璃、春火、おはよー♪」

片瀬 愛弓(カタセ アユミ)と、湖城 陽菜廼(コシロ ヒナノ)が入ってきた。

愛弓は、テニス部に所属してる、スポーツ系の女の子。

陽菜廼は、茶髪で巻き髪ロングの優しい子。

「あっれー?アイツどこいんの?」

クスクスと笑いながら陽菜廼が聞く。

アイツ…っていうのは、狭山 深雪(サヤマ ミユキ)の事。

このクラスでいじめられてる、最も可哀想な子。

皆は、「生贄」とか「ゴミ」とか好き勝手呼んでる。

ああゆうのとは、関わりたくないと思ってる。