―――イオリがいて良かった―――
涙が出そうになる。
「本当?
少しは…ハルの力になれた?」
「当たり前だろ!!」
ああ……もうそれだけで充分だよ。
「あたしも!」
ハルと一緒にいられて幸せだった。
たとえ“嘘”の関係でも。
「じゃあ…先に戻るね?」
「……おぅ」
「あ、ハル!」
あたしは笑顔でハルに手を差し出した。
「握手っ」
ハルがそっとあたしの手を握る。
「幸せにならないと承知しないから!
今度は大切な人、離したら駄目だよ?
…頑張れ!!」
もう…“契約”なんてしないように。
「…………ん」
そして
繋がれた手は
そっと…………離れた。
バイバイ。
ハル。
大好きだよ。
多分…それはずっと
あたしの心から消えない想い。
あたしは振り返らず、一気に階段を駆け降りた。