聞き返された途端、ハッとする。
だけどもう後には引けなくて。
「なんか集中できなくてさ。
まぁ…勝ったけど(笑)」
………って!!!
何言ってんだ俺!!!
これじゃまるで……
「なにそれ…」
ほら、イオリだって怪訝そうに俺を見てる。
「あ、ほら」
なんとか話題を変えようと、咄嗟に鞄からハチマキを取り出した。
「?」
「交換するんだろ?みんな」
…強制じゃないけどな。
汚れてる、とか
まだ乾いてない、とか
理由を並べるイオリから無理矢理ハチマキを奪う。
これじゃ…さっきの女子達と変わらねぇかも。
だけど
なんか嬉しかったんだ。
おそらく、汚れを落とそうと擦った跡がある
薄くなったレインボーカラーで書かれた『陽彰』の二文字。
「こーすれば乾く」
俺は手に持った半乾きのハチマキを太陽の光にかざすように
空に向かって高くなびかせた。


