ママもパパも

翔はブチ切れてこないだろうけど。

入院先にきてないなんて
心配してないんだ。
悪い子だと怒ってるのかな。



オルゴールの安らかな音色が
なぜだか心地よく
耳をくすぐった。


さっきのおばあさんのところに
白いスーツ姿の女の人が
やってきた。



「受付始めますから
外の出口のに来てくださいね。」


「私、杖がないと……」


おばあさんが慌てた。




「大丈夫ですって。
立ち上がって歩いてみて下さい。」


おばあさんは
ゆっくり立ち上がった。


「あれ~れ~」


「ね、ここではもう
杖はいりませんよ。」


おばあさんは屈伸運動や
腿上げをしている。


「不思議だわ~
あんなに足が重かったのに
まるで学生のころ見たい~」


笑顔のおばあさんは
まるで少女のように
飛び跳ねていた。



おばあさんの軽いスキップは
なんだかしっくりこなかったが

おばあさんが
とっても笑顔なので
こっちまで笑ってしまった。



「私ね、学生の頃
短距離の選手だったのよ~」


おばあさんはそう言いながら
受付へ消えて行った。