真重の母親の病室には
違う名前がかかっていた。


詰め所で聞いた。

「江口さんは?」

「あら?この間お見舞いにきた方?」

真重の母の車イスを
押していた看護師だった。


「こんにちわ。」


「江口さん亡くなったのよ。
もうずいぶんたつけど?
息子さんに会ってなかった?」


「はい。」
私はショックでカタカタ震えた。


「あの日、すごく驚くほど
しっかりお話してたでしょう?
江口さんも不思議がってて
話せるうちにいろんなお礼を言いたいって
大変だったの。」


「息子・・・とは話せました?」


「あのあとしばらくして
息子さんがお見舞いにきて
その次の日かな。
息子さんと会うまでって頑張ってたのね。
容体が急変して……
息子さんが駆け付ける前に
亡くなったのよ。」



 そんな


私は口をしっかり押さえた。


看護師に礼をして
病院をあとにした。


マジュ
ひとりぼっちになっていたの?


 どこにいるの?


途方にくれて
私は道端に座り込んだ。

 一人にしてごめんなさい
 マジュ・・・・
 どこにいるの?