ザァ―――…
「あ…っ、」
不意に強い風が吹いて袋ごと海へ飛んでいって、すぐに見えなくなってしまった。
「ナミはカイトのとこに逝ったんだな。」
俺はそうだよって頷いた。
ふーん、素っ気ない返事だったけど、顔をあげてルキを見たら優しい表情で海を眺めていた。
――――――ハラリ……
空を見上げればひらひらと落ちてくるのは。
「雪だ……。」
花吹雪のように無償に降ってくる真っ白な雪は、無償の愛で俺を助けてくれたナミに似ていた。
俺とルキは黙って雪の降る夜の海を眺めた。
脳裏にはナミとの思い出が浮かぶ。
―――拾ってやろうか?
初めて出逢った時のからから。
―――私が死んでもクオは幸せになって。
最後に逢った時のことまで。
いっぱい思い出が溢れてくる。
悲しいのは楽しかったから。
涙が出るのは笑顔だったから。
寂しいのは独りじゃなかったから。
不安なのは安心していたから。
不幸だと思うのは幸せだったから。
ぜんぶ、ナミがいたから。
「俺、ナミになにもしてあげられなかったな………。」
降り続く雪を見ながら呟く。
助けてもらったのに、愛してもらったのに、俺は何ひとつナミにしてあげられなかったな。
「ナミにとってお前は救いだったよ。」
「え?」
ルキはそう言って俺の隣に座った。

