こんなの恥ずかしくて口では言えないけど。
クオと出逢えて幸せだったよ。
自分の息子のように愛してる。
私と過ごした日々が、少しでもクオのなかで辛い思い出じゃなく、優しい思い出として残りますように。
生きて生きてクオがおじいちゃんになったら、私のところに帰っておいで。
それまで私はカイトとゆっくり待ってるよ。
クオの幸せを何よりも祈ってる。
ナミより
「―――――………ッッ」
ポタポタと手紙を濡らしていく涙涙涙。
震えて声すら出ないで泣いていたら、ルキがくしゃくしゃと髪をなでてくれた。
「ルキ、海に連れてって………。」
「海?」
「うん………。」
――――私が死んだら灰は海に撒いて。
ナミとの約束を果たしに行かないと。
ルキの車に乗って海へ向かった。
「さむっ」
少しベタついた冷たい風が頬を撫でる。
陽はとっくに落ちていて、真っ暗な空には転々と星が輝いている。
「なんで海なんだよ?」
白い息を吐きながらルキは海を眺める。
「カイトの灰もここに蒔いたんだって。だから、ナミも自分の灰もこの海に蒔いてって。」
砂浜にしゃがみこんでナミの灰が入った袋を開ける。
今、カイトの所に逝かせてあげるからね。

