「……クオ。一緒に暮らすぞ。」
「ぇ……?」
視線を持ち上げルキを見る。
両頬を包まれ顔を持ち上げられる。
「俺のところに来い。」
真っ直ぐ向けられるルキの力強い視線が心に刺さる。
「おれ、は……ここに居る…っ」
ナミにもう二度と会えないのなら。
せめてナミと過ごしたこの家に居たい。
「しっかりしろよ。ちゃんとするってナミと約束したんじゃねぇの?」
「…………。」
以前より生活感のなくなった部屋を見渡してから、ルキは俺に向き直った。
「ここで独りで暮らすのは何かと不安だろ?別にこの家を出るからってナミの事を忘れる訳じゃないんだし。」
「だけど………」
「っつーか、俺が不安なんだよ。お前を独りにすること……。」
コツンと額を合わせる。
「寂しいんだろ?怖いんだろ?俺が傍にいてやるから。」
俺はルキの服をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう。」
あの日、出なかった涙がボロボロ溢れてくる。
あの日、色を失った世界に少しだけ色が着いた。
ルキは珍しく優しく笑って抱きしめてくれた。
俺は久しぶりに触れた温もりに涙が止まらなかった。
「クオ、これ。」
差し出されたのは真っ白な封筒。
見慣れた字で゙クオべと書かれていた。
封を切ると少しだけナミの匂いがした。

