―――あんた名前は?
―――…………。
名前、なんて長い間呼ばれてなかった。
誰も呼んでくれないから名前なんて、もう忘れてしまった。
―――あんたはクオだ。
―――クオ…?
―――そう。それがあんたの名前。
ナミが俺に初めてくれたもの。
それがこれから生きていくために必要な名前だった。
そして、ナミとの生活が始まった。
ナミが仕事でいないときは独りだったし、誰かと暮らすよりはまだ気が楽だった。
まぁ、ナミも苦労しただろうな。
いきなり子供一人育てるなんて。
あんまり子供好きじゃなさそうだし、ただの小学生じゃなくて俺は訳あり小学生だし。
でもナミは慣れないながらも愛情をいっぱい込めて育ててくれた。
―――ここにはクオを傷つける奴も怖がらせるものも無いから。もう大丈夫だからね。
そう言って抱きしめられた時は、安心して涙が止まんなかったな。
春は桜を見に公園へ連れて行ってくれた。
夏はスイカを食べながら花火をみた。
秋はハロウィンでたくさんお菓子を食べた。
冬は盛大にクリスマスパーティーをした。
だから俺はまた楽しかったら笑えるようになったし、悲しかったら泣けるようになった。
笑顔も楽しいも安心も幸せも、全部ナミが教えてくれた。

