だけど、俺が十二歳のときに事件は起こった。
家に義母の元旦那が家に来た。
そのとき家に居たのは義母と義姉と義兄と俺の四人。
たぶん元旦那は最初から家族四人で心中つもりで来たんだと思う。
なんの躊躇いもなく義母たちを包丁で刺していった。
天井まで真っ赤に染まっていく部屋。
俺は何も言えないで部屋の隅で震えていた。
――――君は関係ないもんね。殺さないよ。だけど、義理でも息子だから苦しんでもらおうかな。
血の臭いが充満する部屋で、三体の死体が転がる部屋で、俺は知らない男に犯された。
隣人の通報で警察がきたとき、義母の元旦那は笑いながら自分の心臓を包丁ぶっ刺した。
今でもあの日、この目で見たものは忘れられない。
家族の悲鳴と飛び散る赤い血。
脳裏の裏にこびり付いている。
それから警察に保護された俺は施設に入ったけど、知らない子供たちがたくさんいる中で生活することなんて不可能に近くて。
しょっちゅう行き場もないのに逃げ出していた。
そして、あの冬の日に……。
―――拾ってやろうか?
ナミと出逢った。
事情を警察に聞いたナミは俺を引き取ってくれた。

