「治療室運ぶよ!立松先生に伝えて!!」
目の前の出来事がテレビでも見ている気分の俺は、運ばれていくナミについて行く事さえできない。
再び静かになった病室はナミの血の臭いが充満している。
目の前が赤色に染まってくらくらしてきた。
俺は一歩も動けずに、ただ立ちすくんでいた。
「クオ…?」
名前を呼ばれて振り向けば不思議そうに俺を見るユウは目を見開いた。
「どうしたんだよ、その血!?ナミはどうした!」
べっとり真っ赤な血のついた服と手をみて、ユウは俺の腕を強く握った。
「ナ……ミ…は…………。」
ぽつり、ぽつりと今あった事をユウに伝える。
話に段々と眉間に皺を寄せていくユウは俺の腕を掴んだまま病室を出た。
近くにいたナースに聞いて、ナミが入った治療室の前のベンチに座った。
「ナミはそう簡単に死ぬやつじゃねぇよ。」
「ん…。」
小さな声で返事する俺にユウはため息をついた。
「お前がしっかりしろよ。」
それ以上は何も言わなかったけど、ナミが出てくるまでユウはずっと隣に居てくれた。

