「別に私だって死にたいわけじゃないから。」
できるだけ長生きしたいし。
ナミはそう言って俺の頭を撫でた。
「――――…っ、ゲホ……ゲホ……ッッ」
真っ白なシーツいきなり真っ赤に染まる。
「え……ナミ?ナミッ!!」
俺は必死にナースコールを押す。
「コホッ……はぁ…っゲホ……」
苦しそうに顔を歪めながら何度も何度も血を吐くナミ。
口元を抑える指の隙間から血が零れて、どんどん赤を広げていく。
「やだ…っ……なんで!?…血が…いやぁ…!」
吐血を止めないナミを目の前にして、パニックになる俺の手をナミは弱々しく握りしめた。
「ナミ…?」
「だいじょ…ぶ…だっ……て……ゲホッ……クリス…マス……パーティー……すん……だ…ろ……?」
「……………。」
「クオ…の……ケーキ………食う…まで……死…なない…か……ら……。」
だからそんな顔すんな、バカ。
途切れ途切れにながらも言葉を繋ぐナミに。
苦しいくせに無理やりでも笑うナミに。
「――――…っ、」
俺も血にまみれた手を握り替えした。
「麻生さん大丈夫ですか!?」
駆けつけた数名のナースが手を施す。
離れていくナミのぬくもり。
騒がしくなる病室を呆然と眺めている。

