―――ナミはバンドメンバーの一人、カイトってヤツと付き合ってたんだよ。
―――でも、カイトは事故で死んじまって、ナミは俺たちの前から姿を消したんだよ。
「ナミはカイトのところに逝きたいの……?」
だから延命治療も受けないの?
ナミは目を大きくして驚きを隠せないでいたけど、あの馬鹿…ってため息をついた。
「カイトのとこに逝きたいなら、カイトが死んで直ぐに自殺してるよ。」
ナミは窓の外を眺めながら話を始めた。
私とカイトは物心着く頃には既にこの町の施設にいて、兄弟のように育った。
いっつも二人で海に行っては、カイトがギターを引いて私が歌ってたよ。
私とカイトには「いつかバンド組んでプロデビューする!」ってでっかい夢があってね……。
高校のときにこんな田舎町じゃ無理だって二人で都会に飛び出したんだ。
いろいろあったけど゙color(カラー)゙ってバンド組んで、あとちょっとでデビュー出来んじゃねぇかって時にカイトが事故に遭っちまって……。
「…………。」
だいたいの事はルキから聞いてたけど、やっぱり本人から聞くのは違う。
子どもな俺は何も言えずにナミの話を聞くことしか出来なかった。
「私には歌うことが存在意義で、あのバンドが全てだった。」
だけど、カイトが死んで歌えなくなった私は誰にも何も告げずに、独りこの町に戻ってきた。
カイトの傍に逝きたかった。

