「クオ、ケーキ食べる?」
「ぅん……」
ナナの好きなイチゴの乗ったショートケーキが差し出された。
中指と人差し指でケーキをえぐってそのまま口に入れた。
甘ったるいクリームが口内に広がる。
「こら、手で食べんな。」
そう言って俺にフォークを握らせるルキ。
「えー…?ナミは手で食ってたよ?」
だから俺もケーキは手で食べるもんだと思い込んでいた。
「あいつは別だ。猿じゃねぇんだから、ちゃんとフォーク使え。」
「はぁ?ナミも猿じゃねぇよ。」
俺とルキの間に少しピリッとした空気が流れた。
「ははっ、ルキが誰かの面倒見るなんてめずらしいな。」
ユメの言葉にトアが笑いながら煙草をくわえた。
「………っ」
反射条件でビクッと体が震える。
「どうかした?」
正面に座っているユメが聞いてくるが、俺は何でもない、と言って小さく体育座りをして震える体を抑える。
「トア、煙草消せ。」
戸惑いを隠せない雰囲気の部屋の中でユウが静かに言った。
「お前が怖いのは煙草か……?」
「だい…じょー、ぶ……」
ユウの質問に答える。
声が震えてカッコ悪い。
大丈夫、怖くない……。
それより面倒くさいって顔される方が怖い…。

