「あ、竜!」
昼休み。
廊下で鞄を肩からかけた竜の後ろ姿を発見して思わず呼び止める。
「なんか久しぶりだな。」
「だって竜、全然教室来ないじゃん?」
「……俺からすりゃ、来ないのはお前なんだけどな。」
俺と竜は同じクラスだけど全然会わない。
今も三日ぶりくらいに会った。
竜は中学生なのにバイトしててしてすぐに早退するし、俺は俺で遅刻魔だし。
二人とも学校に来てるけど、教室に居たり屋上に居たりで、なかなか会わないこともある。
「もう帰んの?」
「おー。今からバイト」
「中坊がどうやってそんなにバイト見つけられんだよ?」
「知り合いの店とか、兄貴の保険証パクったり?」
「へー……」
今まではナミが働いていたからお金のことはそんな気にしなかったけど、ナミがいなくなったら俺もバイトしなきゃダメだよな……。
………ルキ、はあんまり頼りたくねぇし。
「なんで?」
「え?」
「なんでそんな事聞くんだよ。」
返事に困った。
竜はナミのことを知らない。
俺ん家は母子家庭くらいにしか思ってないと思う。
なんとなくだよ、って誤魔化して竜とは別れた。

