白い壁、白い天井、白いベッド、いつも黒や赤などを着ていたナミすら白。
全てが白いセカイで黒を身にまとっているこいつはやけに映えて見えて、よけいに死神に見えた。
「お前なんか死神だ……。」
頭ひとつ分上にある整った顔を思いっきり睨む。
「今すぐ黙らねーと襲うぞ。」
「は…っ?」
何言ってんの?って言葉は言葉になる前に消えていった。
唇に温かくて柔らかい感触……。
「―――…ッッ!!!」
俺は思いっきり金髪を突き飛ばした。
手の甲で唇をゴシゴシと拭いながら、男を睨む。
「俺からしちゃ、自分の都合でナミから好きな物を奪うお前の方が死神に見えるけど?」
そう言って男は俺の横を通って病室から出て行った。
こないだと同じ香水の匂いだけが、病室に微かに残った。
派手な音をたててパイプ椅子に座る。
壊れたって知るか。
「クオ、大丈夫か…?」
心配そうな表情を浮かべたナミが覗き込んできた。
ぽすん、とベットに上半身を倒すとナミが髪を撫でてくれた。
なんか落ち着く……。
「ナミ…。」
「ん?」
「ナミに……長生きし…て…ほしいと思うのは……、俺の……ワガママ………?」
ナミが息を呑んだのが分かったが、すぐに「んなことねぇよ。」と言ってぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜた。

