何度もふっ切ろうと思ったのに、忘れられない。
あの目が。声が。
脳裏の片隅にこびり付いて離れてはくれなかった。
どうしてこんなに気になるのか?
普通ありえないだろ?
そう思いながらも他の女を抱いても満たされることはない。
その度に軽くへこみつつ、俺の気持ちはいっこうに止まってはくれなかった。
「――もう、いっそのことカルテの住所見て会いに行けばいいじゃない」
仕事終わり、ナース達が帰った診察室でこの言葉を聞くのが日課になっていた。
俺の4つ上の姉貴。
俺とこの病院で共に働く頼もしい女医の静香。
性格には少々痛いところはあるが、けっこう頼りがいのある女だと思う。



