―――…
「はーるさん。もう帰っちゃうの?」
背中からやんわりと抱きしめられて、俺はネクタイを締める手を止めた。
綺麗に彩られた爪が俺のお腹の辺りをくすぐり、なぞるように触れられる。
「悪いな。明日も仕事だから……」
さりげなく手を振りほどき、俺はゆっくりと立ち上がった。
「え~つまんない」
「あー…またな。お前は好きな時に帰るといいよ」
そう言ってスーツの上着を羽織る。
ふくれっ面で俺の袖を引っ張る彼女に一瞬だけ笑いかけて、俺はホテルの部屋を後にした。
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