「? そっか…。分かった。じゃあそう伝えとく」
だけどやっぱり彼女には届かない。
笑いもせず、淡々とそう言った彼女に俺の心は重く折れそうになる。
厳しいな。
世の中って想像以上に厳しいのかもしれない……
「あ、それからさ……」
だけどそんな俺に、もう一度振り返った彼女の声が降りそそぐ。
何かを思い出したように急に制服のポケットに手を入れて、ぺらっとしたものを取り出した。
「えっと、これ」
「えっ?」
「ここのコーヒーの無料チケット。さっきのお詫びによかったら」
そっと手を掴まれる。
柔らかな彼女の感触。
ゆっくり添えられた手に、俺はふいをつかれたように目を丸くしてしまう。



