「いや、私はべつに……それよりもそっちの方が……」



そう受け答えしながら、ふと視線をずらせば彼女の右手の薬指からツーとうっすら血が滲み出ていた。


俺はたまらず膝の上の手を掴む。



「……手、貸して?」


「えっ?」



そっと胸元からハンカチを差し出すと、顔を上げた彼女とバッチリ目があってしまった。


しかも至近距離で。少し大きめに見開いた瞳に見つめられて、俺の鼓動は今まで感じたことのないぐらいに大きく膨れ上がる。



「あの……」


「血、出てる……。今一緒に切ったんじゃない?」



思わず吸い込まれそうだった。


その瞳に。視線に。


てか、指ほっせーな…


高鳴る鼓動の中、そんな彼女の指に俺は震える心でハンカチを当てる。