少しは俺の顔を覚えててくれるかと思いきや、まったくそんな素振りはない様子。
俺に見向きもしない。
きっと覚えてもいないんだろう。
それぐらい俺の存在は彼女にとって、きっとただの客。
それ以外何ものでもないんだと思う。
正直恋人の存在も今だ解決できないまま、俺の心はよりいっそうモヤモヤとするばかり。
……でも、そんな時願ってもないチャンスが俺に訪れた。
「きゃっ……」
突然バシャッと膝の上に熱いものが飛び散り、俺はハッと顔を上げる。
そこには…
「うわっ、すみませんっ」
三月果歩…
よろけるようにテーブルに手を付いて、いつになく焦った様子の彼女が俺の目の前に立っていた。