「でもな。ほら、あれ見てみろよ。俺はあんなふうにはなりたくない」



そう言って奥を見ると、いかにもっていう若い男連れの客が彼女にちょっかいをかけている姿が目に飛び込んできた。


何かひっきりなしに携帯を差し出していやらしく言いよってるような様子。



たぶん『携帯番号教えてよ』とか。


そんな類いのナンパだとは思うんだが。



「なるほどね」



彼女はいたって冷静に無視。


きっとあの様子だと言い寄られ慣れている。


店員と客という立場にも関わらず、彼女はあからさまに嫌そうな顔向けて彼ら達を無視し続けている。



「俺はあんな連中と一緒になんかされたくない」

「ふふ。そうね」



ここまでくるのにいったいどんだけ苦い思いをしたと思ってるんだ?


やっとだぞ。


それをみすみす自分のてで。あんな連中まがいのことをして壊したくなんかない。